2012年6月25日月曜日

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リポートおおいた

安全持てない確信/がれき処理で住民ら

2012年06月25日
◆放射性物質漏れないか
受け入れ基準は妥当か

東日本大震災のがれきの処理を太平洋セメント大分工場(津久見市)に委託する県と市の方針を巡り、安全面を心配する声が上がっている。焼却時に煙突から 大量の放射性物質が漏れ出すのではという不安と、県の受け入れ基準「1キロあたりセシウム濃度が100ベクレル以下」が本当に妥当なのかという2点が主な 論点だ。

試験焼却に反対している津久見市徳浦区の区長織田敦任(あつ・ただ)さんは「放射性物質が漏れないか心配だ。工場での除去の実態がどうなっているか知りたい」と話す。

■電気集塵機

同工場によると、セメント精製時には木くずや石灰、焼却灰などの原料は「プレヒーター」という装置で熱した後で「キルン」という炉に入れ、最高1450度で焼成。セメントになる前の中間生産物「クリンカ」にする。

一連の高温による製造過程で、気化したガスに含まれるダスト(微粒子)は煙突の「電気集塵(しゅう・じん)機」という装置で捕集される。同社によると、沸点が製造温度より低い水銀なども気化した後に集塵機に吸着する。

福島第一原発の事故で広がったセシウム(沸点671度)が被災がれきに含まれていた場合、セメント原料と同様に気化し、集塵機で捕集されると考えられている。そのため、安全性は飛散を防ぐ集塵機の性能に左右されることになる。

工場側は具体的な捕集率を明らかにしていないが、環境省によると、焼却炉の電気集塵機の場合は「96・65%~97・84%」。100%ではない。この点について県廃棄物対策課は「環境省が安全と考える範囲だ」と説明する。

一方、電気集塵機には課題がある。東日本のある集塵機メーカーによると、吸着するダストの増大や電気抵抗が異なる多様な原料が混ざると、捕集率が落ちる傾向があるという。

太平洋セメントの大船渡工場(岩手県大船渡市)はすでにがれきを受け入れ、処理している。大分工場同様に電気集塵機を使っている。「捕集率は言えない。だが、きめ細かいメンテナンスによって安定運転している」(業務部)という。

■100ベクレル

1キロあたりの放射性セシウム濃度「100ベクレル以下」が安全だとする科学的根拠を知りたい、という声もある。津久見市と隣り合う臼杵市の中野五郎市長らが疑問を呈している。

県は、放射性物質を含む廃棄物を再利用したり埋め立てたりできる国の基準「クリアランスレベル」を採用したと説明する。2005年の原子炉等規制法の改定で設けられた。

安全性の根拠として内閣府の原子力安全委員会が示すのは、解体した原子炉施設を再利用した建材を使った家に住むなど複数のケースを想定した計算から、 「クリアランスレベルなら年間被曝(ひ・ばく)量を0・01ミリシーベルト以下に抑えることができる」というデータだ。自然界や医療以外で一般人が浴びる 追加被曝線量の限度とされる年間1ミリシーベルトに比べ「無視できるほど低い」と強調する。

一方、クリアランスレベルに疑問を投げ掛ける向きもある。導入時の05年、東京・国分寺市議会は「乳幼児や胎児を含む市民が被曝する」と反対の意見書を可決した。基準の算定では胎児や乳幼児に対する影響が十分に考慮されていないことが背景にある。

「濃度より放射性物質の総量が安全性の鍵を握る」という指摘もある。藤田祐幸・元慶応大助教授(物理学)は「濃度は低くても総量が増えればリスクは増える。人体や動物への蓄積、濃縮を考えると総量を考慮するべきだ」と話す。

■健康調査求める声も

がれきを受け入れた場合、住民の健康調査や土壌・大気の放射能の監視や調査を求める声もある。18日の津久見市議会の一般質問で森脇千恵美議員が「後から症状や被害が出る有事に備えるべきだ」と訴えた。

だが、健康調査について市は「がれきは安全なものだけ受け入れる」として否定的だ。環境調査について県廃棄物対策課は「試験焼却の結果を見て判断する」との立場だ。(稲野慎、新宅あゆみ)

◆ベクレルとシーベルト

ベクレルは放射能の量を表す単位。原子核が1秒間に1回崩壊して放射線を出す場合を1ベクレルという。放射性物質の濃度は「1キロあたり何ベクレル」な どと示す。シーベルトは放射能の人体への影響を表す単位。人間の体すべての約60兆個の細胞の核に平均1本の放射線が当たる場合を1ミリシーベルトと定義 している。1999年の茨城県東海村のJCO臨界事故で亡くなった2人は6~20シーベルトを浴びたとされる。

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